| 無為気功養生会合宿 2006年5月4〜5日 大雄山最乗寺
夏の養生と練功
・廖赤陽・
一. 夏――「養長の道」
人は天地の子、四季の変化によって育てられている。これは、およそ2000年前の一冊の経典に書かれた言葉である。この経典は、ほかではなく、養生学の聖書とも言われた『黄帝内経』であった。『黄帝内経・素問・保命全形論』には、次のように書いてある。
「人以天地之気生、四時之法成」。つまり、天地の陰陽の気の交わりによって、人間が生まれて、四つの季節の変化の法則にのとって、人間が成長するのである。
養生と四季との関係について、体系的に論じたのは、およそ2000年前の『黄帝内経』である。
『黄帝内経・素問・四気調神大論』:
春三月.此謂發陳.天地倶生.萬物以榮.夜臥早起.廣歩於庭.被髮緩形.以使志生.
生而勿殺.予而勿奪.賞而勿罰.此春気之應.養生之道也.逆之則傷肝.夏為寒變.奉長者少.
夏三月.此謂蕃秀.天地気交.萬物華實.夜臥早起.無厭於日.使志無怒.使華英成秀.
使気得泄.若所愛在外.此夏気之應.養長之道也.逆之則傷心.秋為 瘧.奉收者少.
冬至重病.
夏三月、此れを蕃秀と謂う。天地の気交わり、萬物は花咲実る。夜に臥し早く起き、日厭きること無かれ。志をして怒ることなからしめ、 華英にして成秀せしめ。気を泄らすを得さしめ、愛する所をして外に在るが若くせしむ。此れ夏氣の応、養長の道なり。これを逆らえば則心を傷り、秋に 瘧となり、収に奉ず者少なく冬至らば重ねて病む。
(読み下し文は、南京中医学院編・石田秀実監訳、島田隆司、庄司良文、鈴木洋一、藤山和子訳『黄帝内経・素問 上』より、東洋学術出版社、1991’2000年)
秋三月.此謂容平.天気以急.地気以明.早臥早起.與倶興.使志安寧.以緩秋刑.
收斂神気.使秋気平.無外其志.使肺気清.此秋気之應.養收之道也.逆之則傷肺.
冬為 泄.奉藏者少.
冬三月.此謂閉藏.水冰地^.無擾乎陽.早臥晩起.必待日光.使志若伏若匿.若有私意.
若已有得.去寒就温.無泄皮膚.使気亟奪.此冬気之應.養藏之道也.逆之則傷腎.
春為痿厥.奉生者少.
同じ養生といっても、季節に応じてその方法が異なる。
春の気は「生気」であり、ポイントは「養生」。
夏の気は「長気」であり、ポイントは「養長」。
秋の気は「収気」であり、ポイントは「養収」。
二. 夏の節気の変化
明日の23時に31分に、立夏という節気になり、立夏からの三が月間、夏という暑い季節である。
春の最後の節気――「穀雨」。今年では4月20日13時26分から始まる。雨水によって百の穀物が生み出される、という自然現象から名付けられている。
なり易い病気:神経痛。春=木=肝気。木は土を克つ、脾胃の土が抑えられる。
清明の最後の三日から穀雨終わるまでの18日間、食欲が旺盛。夏のエネルギーの消耗に備えて栄養を補充すべき。
夏の六つの節気
立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑。そのうち、さらに前半と後半に分けられる。前半は、立夏から夏至の2が月間、後半は、小暑・大暑の一ヶ月間。
立夏。今年は5月5日、23時31分。「夏」の元の意味は「大」である。
小満。今年は5月21日12時32分。万物が充満する。
芒種。今年は6月3時37分。麦など、のぎのような、種の先に細い毛が生えている植物が成熟し収穫の季節に入る。夏の田植えの時期でもある。
夏至。今年は6月21日20時26分。一年中日射の時間が最も長い日。陽の気が極める。陰気がひそかに伸び始める。
小暑。今年は7月7日13時51分。
大暑。今年は7月23日7時18分。一年中最も暑い時期に入る。蒸し暑く、高温を続く。
三. 夏の人体生命の変化と注意点
共通点:熱い。成長――茂る――実るーー萎えて収縮。
夏=陽気=火=心気。
夏の「養長」の最も重要なポイント:心気の保養。
中医学:「心」二つの意味。
1. 人体の臓器のひとつ。西洋医学の心臓に相当する。
2. 心は神明を主とする。
外面――外形、顔色、目の耀き、言語、身体の身振りなど。
内面――精神、意識、思考活動を指している。
『黄帝内経』の原文。「夜に臥し早く起き」という一文以外、すべて精神・情緒の調節にかかわる内容。
四. 夏の飲食と練功
最も重要な課題は二つがある。
1. 冷房などによる夏の現代生活病。汗を出さない――水液の排出は尿液のみ――腎気が損なわれる。冷え性の原因。
2. 脾と胃の保養。
栄養を補充すべきである、ただし、「清補」を原則とする。
エネルギーの消耗は非常に大きい。大量の栄養の補充が必要。
ただし、重厚の味、油っぽいもの、塩辛いもの、揚げ物などを避けるべき。
味の薄いもの、魚、野菜、果物などをメインとすべき。
野菜:キュウリ、トマト、その他の旬のもの。東瓜は、美容、利尿、清涼の効果がある。
果物:スイカ、パイナップル、マンゴなどがその季節のものである。
注意:脾胃虚寒(おなかのゆるい人、胃腸の弱い人、冷え性のタイプなど)の人は冬瓜やそれらの果物を控えるべき。
栄養たっぷりのスープ、おかゆなどは、栄養の吸収にもよいし、水分の補充にもなる。
肉:鶏肉、カモ肉、豚肉や牛肉もよい。羊肉は避けるべき。牛肉は焼肉ではなく、ジャガイモと一緒にスープにするが、あるいは和食の肉ジャカにする。牛肉は栄養がたっぷりであるが、繊維が太いために消化しにくい、ジャッガイモは胃を守る効果がある。
冷たい食べ物を避ける。
氷水やアイスは夏の「風物詩」。
夏=陽=人体の陽気は体表へと発散。外部は陽――中は陰:人体という冷蔵庫。冷蔵庫に冷たいものを入れるとさらに冷え込む――気血液の循環を鈍らせ、消化機能を麻痺――脾胃の消化機能が低下、食欲を失われ――エネルギーの補充が出来なくなり――身体がだるくなりやる気がなくなる。
焼肉や揚げ物を避ける。焼肉、揚げ物などを避ける。
苦味を中心、酸味と辛味を適当に取り入れる。
夏=火=心気=苦味そのために、夏の味の基調は苦味。
食べ物の四性(温・平・寒・熱)・五味(苦味=心、辛味=肺、甘味=脾、酸味=肝、塩味=腎。
苦味の野菜:苦瓜やセロリなど但し、寒涼の性質のものが多く、脾胃虚寒の方は要注意。
酸味は肝気を補い、肝気は木に属し、木は火を生生かして心気を促進する役割がある。
酸味のもの:梅の酸味は肝気を補い、食欲を増進、殺菌作用。その他、酢豚やトマト。
辛味。東南アジアや四川省など、湿熱気候の地域が多く使われている。湿熱を発散する作用がある。辛味=肺気=金。夏の火気の肺気への損傷を防止する役割がある。但し、日本の気候は東南アジアや四川省ほど湿熱が強くない。梅雨の季節や蒸し暑いときには適量に取り入れてもよい。
練功の原則
黄帝内経の原則に従う。夏は万物成長、繁栄、充実の季節である。気の動きは中から外への発散。
遊龍功を例として、春の練習は、柔らかく、さわやかな風の中に新緑を咲きかえる柳の枝のように身体を伸ばす。
夏の場合は、自然界の成長・壮大のリズムに合わせて、より逞しく、大きく揺れ動けばよい。気持ちは中から外へと広げていく、気持ちとともに内気を自然に膨らませて全身に行き渡る。喜びの気持ちは身体のいたるところから湧き出す(夏=火=心=喜び)。
気功の練習者は、身体の感性を磨くだけではなく、高度な理論の勉強も不可欠。理論はこれまでの実践のまとめであり、実践の指針でもある。
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