| 〜暑くでもやはり温かい食べもの〜
廖萃萃 06、07、21
テレビのある料理番組で夏の季節に元気が出る料理を紹介していました。うなぎの蒲焼きに野菜料理(ビーマやきのこ、トマトなどをフライパンで軽く焼くもの)、冷たいスープ、ニガウリと豆腐の和え物。うなぎはパワーのある魚で、エネルギーの消耗が多い夏にはとってもいいです。そして、野菜にも食物繊維やビタミン類などの配慮で、バランスよく組み合わせています。
食材の面で見ると、いいではないかと思います。私が気になるのは、やはり温かいものがないところです。うなぎと野菜は焼いているが、さめやすいので、食卓に出したと時に、ほとんど冷めています。ニガウリは生で、塩水でしんなりさせて、電子レンジでチンした豆腐と和えるだけ、温かくならないでしょう。更に、冷たいスープ。
夏は暑い、食欲が無くなりやすい。冷たいものを食べて、飲んで、身体を冷やして、食欲を引き出す、と思っている人が少なくいるようで、夏になると、いろいろな冷たい料理が紹介されています。
では、ほんとに夏には冷たいものを食べて良いのでしょうか。デザートくらいならばいいが、食事はやはり温かいものがいいと、私は思います。
食べ物や飲み物は口から入って、食道を通して、まず胃袋に至ります。中医学(東洋医学)の視点によれば、この胃袋は五行の「土」に属しています。「土」は温かさが好きです(日当たりのよい畑は陰湿の畑より収穫がいいことは常識)から、「土」に属している胃袋も温かいものが好きです。この点では、日本の養生達人貝原益軒氏が300年前に著した『養生訓』にすでに指摘されました。
『人の身は元気を天地にうけて生ずれ共、飲食の養なければ、元気うゑて命をたもちがたし。元気は生命の本也。飲食は生命の養也。此故に、飲食の養は人生日用専一の補にて、半日もかきがたし。然れ共、飲食は人の大欲にして、口腹の好む処也。其このめるにまかせ、ほしゐまゝにすれば、節に過て必(ず)脾胃をやぶり、諸病を生じ、命を失なふ。五臓の初(はじめ)て生ずるは、腎を以(て)本とす。生じて後は脾胃を以(て)五臓の本とす。飲食すれば、脾胃まづ是をうけて消化し、其精液を臓腑におくる。臓腑の脾胃の養をうくる事、草木の土気によりて生長するが如し。是を以(て)養生の道は先(まず)脾胃を調るを要とす。脾胃を調るは人身第一の保養也。
古人も飲食を節にして、その身を養ふといへり。 人生日々に飲食せざる事なし。常につゝしみて欲をこらへざれば、過やすくして病を生ず。古人「禍は口よりいで、病は口より入」といへり。口の出しいれ常に慎むべし。
飯はよく熱して、中心まで和らかなるべし。こはくねばきをいむ。煖なるに宜し。羮(あつもの)は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ、血液をへらす。』
中医学理論から説明するのは、理解しにくいかも知れません。生理学で簡単に考えてみましょう。
人間は生き物であり、この身体を構成する細胞も生き物です。口から取り入れている食べ物を身体の必要な栄養に変わっていくのは、まず胃袋の細胞の働きがあります。胃袋の細胞は温かい環境の中に生きているから、温かい食べ物を取り入れれば、細胞たちに優しいうえに、働きを促進できます。冷たいものが入ってくると、細胞たちの働き能力は低下してしまいます。食欲がないことは細胞たちの働き能力が低下している時で、冷たいものを食べたり、飲んだりすることは、さらに彼らの働き能力をなくしてしまいますから、ますます食欲がなくなるのです。
ですから、夏は暑いけど、やはり温かいものを食べたり、飲んだりするほうが、健康のためです。
問題は、このような理論的なことを知っていても、いくつの問題や認識を解決しなければなりません。
一、「冷たいものではないと食べたくない。」
これが、身体の状態があまりよくない信号です。健康な状態ならば、胃袋は「温かいものを好む」のです。もともと好きなものがいやになり、いやなものが好きになったのは、異常です。実は、この時の胃袋はすでに冷えてしまい、細胞の働き能力が低下しています。中医学では「虚熱」が生じていると言います。この場合に、さらに冷たいものを食べたり、飲んだりすると、悪化する一方です。改善する方法は、具体な状態にもよるが、食べ物の温度から言えば、すぐ温かいものに変わるのは一番いいです。もし、これがムリなら、まず冷たくないような常温なものから、意識的に、徐々に温かいものを食べるように努力する必要があります。
二、「温かいものを食べると、汗をかくから、いやだ。」
人間は自然界の一分子ですから、自然界の影響を受けながら、自然界と同様に身体が変化していきます。逆で言えば、自然界の変化に逆らうと、体調が崩れたり、病気になったりします。日本は四季があって、夏は暑い、冬は寒い。ですから、日本に住んでいる人たちもこの自然環境を受けて、夏は暑さを耐えて、冬は寒さを耐えて生きます。夏は暑いですから、汗をかくのは当たり前のことですし、身体にとってよいことです。なぜかというと、身体の水分の70%は尿や汗として排出します。それと共に、体内の老廃物も一緒に排出します。もし、汗で排出しなければ、すべて尿として排出することになります。そうすると、腎臓の負担が重過ぎ、老廃物も十分に排出できません。夏あまり汗をかかない人は、腎臓の機能が低下し、腎臓の病気にかかりやすい。
ですから、夏は汗をかくのはいいことです。温かいものを食べるもそうですが、部屋中の温度調節にも気をつけなければなりません。
三、「夏が暑いから、火を使いたくないから、温かいものを作れない。」
火気は活気、台所で火をあまり使ってない家は、ほとんど活力がない、と言えるのではないでしょうか。
五行の理論によれば、「火」から「土」を生む、「土」から「金」を生む。台所の火があるからこそ、家に活気があふれるものです。「火」=温かい、身体に優しい料理、「土」=胃袋=元気な家族、「金」=生活の基盤。
最初の話題に戻りますが、その冷たいスープを温かいスープに変われば、胃袋にやさしいメニューになるのでしょう。
注:
ニガウリ:味は「苦」、性は「寒」。「清熱、解毒、防暑、明目」の効果がある。血糖値を下がる、免疫力を高める作用もある。暑気払いに良い野菜ですが、胃の弱い人や、冷える体質の人には宜しくない。
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